第2回 FRAXに関するアンケート調査結果報告

世界保健機関(WHO)が開発した骨折リスク評価ツールFRAX(R) がわが国でどのように受け入れられているかについて、昨年に続き本年もアンケート調査を実施しましたので報告いたします。本調査にご協力賜りました諸先生方に厚く御礼申し上げます。

I.アンケート調査の方法

(1)実施期間:2010年10月1日~10月末日
(2)対象:日本骨粗鬆症学会所属医師およびA-TOP(Adequate Treatment of Osteoporosis)研究会参加医師
(3)方法:郵送法、自記式(アンケート用紙の郵送)
(4)調査項目:FRAX(R)の活用実態、印象など(添付資料1および参考資料1

 

II.アンケート結果

1.アンケート数および対象者背景
  1)アンケート総数:1468
  2)回答数:417(回収率:28.4%)
  3)
アンケート(回答)対象者背景  

(1)年齢層:回答者の年齢は41~60歳が約75%を占めていた。

図1

(2)居住地:関東地区からの回答が31.7%と最も多く、ついで関西、北海道・東北、九州・沖縄地方からの回答が多かった。

図2

(3)所属:回答医師の所属は医院・クリニックおよび一般病院で79.7%を占めた。

図3

(4)診療科:診療科では整形外科が最も多く(65.1%)、内科および産婦人科で28.7%、その他の診療科は6.2%であった。

図4

2.アンケート結果
(1)認知度

「知っていて既に使用」が99名(23.8%)、「知っているが使用していない」が58.9%であり、「知らない」は17.3%であった。なお、昨年の調査では「知らない」が24.9%であったのに比較し、着実に認知度は向上していた。(2009年調査との比較の図は後示

図5

(2)使用目的<複数回答可>
使用目的は「話題提供」(61.0%)が最も多く、「治療への説明」(50.0%)、「治療の判断基準」(27.0%)と続いた。この傾向は昨年調査と同様であったが、昨年との比較では「話題提供」、「患者のスクリーニング」目的での使用比率が増えていた。(2009年調査との比較の図は後示

図6
(*複数回答の場合の分母は回答者数として算出)

(3)算出ツール
数値の算出ツールに関しては、2010年になって使用できるようになった専用「計算機」との回答が74.1%と最も多く、web利用は25.0%であった。昨年度の回答ではweb利用が67.6%を占めていたが、算出に当たっては簡便な方法が求められていることが窺われた。

図7
(*複数回答の場合の分母は回答者数として算出)

(4)算出方法(時期)
算出時期は、「診察時に聞き取り、その場で算出」が約半数であり、「診察時に聞き取り、後日に算出」は20.8%であった。また、数値算出の日をみると、診察当日に算出されているケースが76.5%を占めた。昨年の調査では、後日算出(42.6%)と当日算出(48.5%)が半々であったのに比し、当日算出の割合が増えた。(2009年調査との比較の表は後示

図8
(*複数回答の場合の分母は回答者数として算出)

(5)算出操作<複数回答可>
医師の算出が最も多く、約8割を占めた。昨年の調査と同様であった。

図9
(*複数回答の場合の分母は回答者数として算出)

(6)患者さんへの結果伝達時期
結果伝達は、当日の伝達が76.2%を占めた。 算出時期の項で述べたように昨年の結果に比し、診察当日での伝達割合が増えた。

図10
(*複数回答の場合の分母は回答者数として算出)

(7)FRAX(R)の臨床ツールとしての印象
使用後の印象に関しては、「良い」が37.0%あったが、「判断するには早すぎる」41.7%と慎重な意見も多かった。これは昨年調査と同様の傾向であった。(2009年調査との比較の図は後示

図11

(8)FRAX(R)を使用しない理由<複数回答可>
「時間が無い」(45.7%)が最も多く、「診察室にPCが無い」(30.0%)、「入力が面倒」(28.8%)に続き、「算出値が妥当か疑問」(25.5%)、「算出値の解釈が不明」(17.3%)の順であった。(2009年調査との比較の表は後示

図12
(*複数回答の場合の分母は回答者数として算出)

(9)薬物療法開始基準へのFRAX(R)の主要骨折10年危険率15%の導入について
「妥当」との回答が40.2%であり、「妥当と考えない」(14.5%)の約3倍であった。一方、薬物療法開始基準へのFRAX(R)値を追加する予定であることを「知らない」との回答が45.3%あった。

図13

(10)検診への使用
検診の場での使用に関しては、介入基準値が決まれば「使用する」が66.9%であった。

図14

3.昨年アンケート調査(2009年)との比較

(1)「認知度」の推移

図15

(2)「使用目的」の推移

図16

(3)「算出方法(時期)」の推移

図17
(-:調査項目になし)

(4)「FRAX(R)の臨床ツールとしての印象」の推移

図18

(5)「FRAX(R)を使用しない理由」の推移

図19
(-:調査項目になし)

 

III.考察およびまとめ

骨粗鬆症を診るプライマリーケア医向けに、世界保健機関(WHO)が骨折リスクツールFRAX(R)を開発し、2008年2月にWebで公開した。すでに欧米ではその評価を積極的に診療に採り入れて活用している。わが国においてもその臨床応用が検討されており、この骨折リスク評価ツールFRAX(R)がどのように受け入れられているかについて、日本骨粗鬆症学会所属医師およびA-TOP研究会参加の医師を対象に、昨年と同様にアンケート調査を実施した。調査結果のポイントは以下に集約される。

(1)FRAX(R)の認知度は確実に増加している。(「知らない」との回答が約25%から17%へと減少した)

(2)FRAX(R)の利用は、「話題提供」および「治療への説明」を目的として利用しているケースが多かった。この傾向は昨年と同様であったが、昨年との比較では「話題提供」「患者のスクリーニング」目的での使用比率が増えていた。

(3)「使用後(臨床ツールとして)の印象」に関しては、「判断するには早い」との慎重な意見も多かったが、良いとの回答も同程度であった。

(4)「薬物療法開始基準へのFRAX値15%」の導入に関しては、「知らない」との回答が約45%あり、現時点でわが国のガイドラインにFRAX(R)が組み込まれていないのもその一因と考えられた。

(5)FRAX(R)値の算出時期は、昨年は当日算出と後日算出がほぼ半々であったが、今回の調査では当日の算出が75%を越えた。また、患者さんへの結果伝達時期に関しても、「診察当日」の割合がこの1年で増加した。これは、FRAX(R)値算出ツールとして専用計算機が出現したことによる影響が大きく寄与しているものと思われた。値算出の操作は昨年同様、医師自身が多く、このことからもFRAX(R)の普及には簡便な算出方法が望まれていることが窺えた。

(6)FRAX(R)を使用しない理由は、「算出値が妥当か疑問」など、FRAX(R)に対する根本的な疑問が約15~25%、入力方法や時間などの理由が約30~45%となっており、普及にはまだ工夫の余地がある。

(7)最後に、初回と第2回の調査に両方回答していただいた医師の回答を抽出して層別解析を行ったが、全体の傾向は初回とほぼ同様であった。

アンケート調査にご協力いただきました先生方に感謝申し上げます。

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