第3回 FRAXに関するアンケート調査結果報告

 骨粗鬆症財団では、世界保健機関(WHO)が開発した骨折リスク評価ツールFRAX(R)がわが国でどのように受け入れられているかについて、2009年からアンケートによる実態調査を実施してきました。第2回(2010年)に次いで、第3回目の調査を2012年4月に実施しましたのでその結果を報告いたします。 本調査にご協力賜りました諸先生方に厚く御礼申し上げます。

調査結果のポイントは以下に集約された。

1)2012年における調査概要
(1)FRAX(R)が「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版」の薬物治療開始基準に追加採用されて3ヵ月たった時点でのアンケート調査である。
(2)アンケート総数2,119に対し回答数568であり、回収率は26.8%であった。
(3)調査項目は、原則3回とも共通の質問項目としたが、今回は新規項目として薬物治療開始基準に追加されたことに伴い、その「認知度と妥当性」および「患者の治療を必要と感じるFRAX(R)の値」を質問項目に追加した。
2)調査結果
(1)FRAX(R)の認知度は、「知らない」の割合が初めて10%以下となった。
(2)FRAX(R)の使用に関する項目について
  • 1.使用目的は「治療への説明」や「話題提供」が多いが、今回は「治療の判断基準」としての使用が最上位となった。
  • 2.算出ツールは、「専用卓上計算機」の使用が最も多く、7割を占めた。
  • 3.同時に、算出方法・時期、算出場所、結果伝達時期などは卓上計算機の利用が可能になったことが、FRAX(R)値の後日算出の比率を減少させ、待合室・受付での算出を増加させ、診察当日での伝達割合を増やしたことに影響していると考えられた。
(3)FRAX(R)を使用した印象について(臨床ツールとしての印象)
  • 1.「良い」との印象と「使いにくい」等の否定的印象が相半ばしている。
(4)ガイドライン薬物治療開始基準へのFRAX(R)の主要骨折確率15%の導入について
  • 1,「知っており妥当」との回答が61.1%であり、「知っているが妥当と考えない」との回答16.4%を大きく上回った。
(5)患者の治療を必要と感じるFRAX(R)の値に関して
  • 1.「15%程度」との回答が最も多かったが、治療する立場の医師への質問のためガイドラインのカットオフ値に近似したものと考えられた。

本調査の実施には日本イーライリリー(株)の団体活動の支援寄附金を受けた。感謝申し上げます。

 

1. アンケート調査の方法

(1)実施期間:2012年4月1日~4月末
(2)対象:日本骨粗鬆症学会所属医師およびA-TOP(Adequate Treatment of Osteoporosis)研究会参加医師
(3)方法:郵送法、自記式(アンケート用紙の郵送)
(4)調査項目:FRAX(R)の活用実態、印象など

 

2.アンケート結果

1)アンケート数および対象者背景
  (1)アンケート総数:2,119
  (2)回答数:568(回収率:26.8%)
  (3)アンケート(回答)対象者背景:表1

表1 対象者背景

項  目
n
(%)
年齢区分 ~40歳
58
10.6
41~50歳
187
34.2
51~60歳
190
34.8
61歳~
111
20.3
546
(99.9)
居住地 北海道・東北
67
12.7
関東
148
28.1
甲信越
44
8.4
東海
62
11.8
関西
77
14.6
中・四国
53
10.1
九州・沖縄
75
14.3
526
(100)
所属 医院・クリニック
202
41.5
一般病院
173
35.5
大学病院
96
19.7
その他
16
3.3
487
(100)
診療科 内科
96
19.7
外科
10
2.0
整形外科
323
66.2
産・婦人科
39
8.0
その他
20
4.1
488
(100)


2)アンケート結果
  [1]認知度
  
FRAX(R)を知っている割合(「知っていて既に使用(25.2%)」と「知っているが使用していない(66.2%)」の合計)は91.4%であった。 「知らない」との回答割合は8.6%と今回初めて10%以下になった(図1)

n=568)

 

  [2] FRAX(R)使用に関する項目
  
使用目的、対象患者、算出ツール、算出操作主体、算出方法・時期、算出場所および結果伝達時期については表2にまとめた。

表2 FRAX(R)使用に関する項目

 項 目
(%)
使用目的* 治療の判断基準
95
66.4
治療への説明
74
51.7
話題提供
62
43.4
患者のスクリーニング
13
9.1
検診でのスクリーニング
23
16.1
その他
8
5.6
143
(-)
対象患者 既存患者のみ
14
10.0
新規患者のみ
52
37.1
両方(全ての患者)
72
51.4
その他
2
1.4
140
(99.9)
算出ツール* Net(Web)
45
31.7
CD-ROM
6
4.2
卓上計算機
98
69.0
i-Phone
3
2.1
その他
1
0.7
142
(-)
算出操作主体* 医師
112
78.3
看護師
29
20.3
患者
8
5.6
その他
9
6.3
143
(-)
算出方法・時期* 診察前に記入、診察(前)時に算出
36
25.5
診察時に聞き取り、その場で算出
76
53.9
診察時に聞き取り、後日算出
27
19.1
その他
7
5.0
141
(-)
算出場所* 待合室・受付
22
15.5
外来診察室
110
77.5
その他
15
10.6
142
(-)
結果伝達時期* 診察当日
111
79.9
後日来院時
26
18.7
その他
3
2.2
139
(-)

*複数回答の場合、回答者数を分母として割合を算出した

 

 (1)使用目的 <複数回答可の質問>
 
使用目的は「治療の判断基準」(66.4%)が最も多く、「治療法の説明」(51.7%)、「話題提供」(43.4%)と続いた。 患者・検診のスクリーニングの目的での使用は25.2%であった。                                               

 (2)FRAX(R)算出ツール (複数回答あり)
 
「卓上計算機」(69.0%)と「Net(web)」(31.7%)での算出がほとんどであるが、計算機での算出はNet(Web)利用の2倍超多かった。わが国では2010年から専用の卓上計算機が利用できるようになっており、計算機はどこでも使える利点があり、算出に当たっては簡便な方法が求められていることがうかがえた。

 (3)算出操作主体<複数回答可>
 
「医師」の算出が最も多く、約8割を占めた。一方、「患者」算出も5%程度あり、これはFRAX(R)専用の卓上計算機が利用できるようになったことによるものと考えられる。

 (4)FRAX(R)値の算出方法・時期 (複数回答あり)
 
算出時期は、「診察時に聞き取り、その場で算出」が5割を超えており、診察時および診察前の聞き取りと算出がほとんどを占めた。「後日算出」は2割程度であり、診察当日に算出されることが多くなっている。

 (5)算出場所(複数回答あり)
 
「外来診察室」での算出がほとんど(77.5%)であったが、「待合室・受付」での算出も1割以上あった。

 (6)患者さんへの結果伝達時期 (複数回答あり)
 
結果伝達は、「診察当日」の伝達が約8割を占めた。 算出方法の項で述べたように診察当日での伝達割合が増えている。

[3]FRAX(R)を使用した印象などの項目
臨床ツールとしての印象に関しては、「良い」「判断するには早い」「使いにくい/使えない」の項目で、また、FRAX(R)を使用しない理由については表3に示した項目で調査した。

表3 FRAX(R)を使用した印象などの項目

項 目
(%)
臨床ツールとしての印象 良い
65
47.4
判断するには早い
48
35.0
使いにくい・使えない
24
17.5
137
(99.9)
使用しない理由* 算出値が妥当か疑問
86
22.7
骨折リスク期間10年は長すぎる
50
13.2
算出値の解釈が不明
73
19.3
入力が面倒
141
37.2
時間がない
148
39.1
診察室にPCがない
115
30.3
その他
65
17.2
379
(-)

*複数回答の場合、回答者数を分母として割合を算出した

 

(1)臨床ツールとしての印象
 臨床ツールとしての印象に関しては、「良い」が47,4%であった。 一方、「判断するには早い(35.0%)」と「使いにくい(17.5%)」を合わせると52.5%となり、良い印象と否定的印象とが半ばしている。

(2)FRAX(R)を使用しない理由<複数回答可>
 
「入力が面倒」、「時間がない」、「診察室にPCがない」などの物理的理由によるものの回答が各々ほぼ3~4割と多かった。 「算出値が妥当か疑問」、「骨折リスク期間10年は長すぎる」、「算出値の解釈が不明」といったFRAX(R)そのものに起因する理由の回答もそれぞれ約1~2.5割あった。

[4]第3回(2012年)調査時のみで実施した項目

 新たにFRAX(R)が「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」の薬物治療開始基準に追加されたことに伴い、それに関する項目として、その認知度と妥当性および患者の治療を必要と感じるFRAX(R)の値について調査した。 

(1)薬物治療開始基準へのFRAX(R)の主要骨折確率15%の導入について
 知っているとの回答(「知っており妥当」と「知っているが、妥当と考えない」の合計)は77.5%であった。「知っており妥当」との回答が61.1%であり、「知っているが妥当と考えない」16.4%を大きく上回った(図2)。 

n=494)

 

(2)薬物治療開始基準へのFRAX(R)(骨折危険率15%)の導入について(知らないと回答された方へ)
ガイドライン薬物治療開始基準に追加されたことを知らないと回答された方でも、「追加内容は妥当と考える」が61.6%であったが、一方、「追加内容は参考にしない」と否定的である回答は34.3%であった(図3)。 

n=99)

 

(3)患者さんの治療を必要と感じるFRAX(R)
「15%程度」が58.8%と最も多く、ついで「30%程度」が27.2%であり、それ以外の数値の回答はいずれも10%以下であった(表4)。 

 

表4 患者さんの治療を必要と感じるFRAX(R)

患者さんの治療を必要と感じる値 (%)
10%以下でも 10 7.4
15%程度 80 58.8
30%程度 37 27.2
50%程度 6 4.4
70%程度 1 0.7
70%以上 0 0
その他 2 1.5
136
(100)

 

[5]検診への使用
検診の場での使用に関しては、介入基準値が決まれば「使用する」が63.9%であった。

(以上)

なお、第1回(2009年8月)、第2回(2010年10月)および第3回(2012年4月)の調査結果をまとめた報告書はOsteoporosis Japan誌に調査報告として投稿した。(2013年1月号に掲載)

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